TVアニメ『終物語』 総監督 新房昭之インタビュー

10月3日(土) 24時からの放送に向け制作が進む、TVアニメ『終物語』。作品の魅力や様々な情報を、総監督の新房昭之さん、そして同席された岩上敦宏プロデューサーに伺いました。

TVアニメ『終物語』放送開始に向け

いよいよ10月からの放送が迫ってきました。まずは、小説を読まれた際の感想や、魅力を感じられた点を教えて下さい。

新房
衝撃的でした。これまでアニメでも描いてきた様々な内容が伏線となっていて、その全てが収束していく凄い展開に驚かされましたね。

その『終物語』をアニメにするにあたり、制作的にどの様な事を考えながら進められているのでしょうか?

新房
これまでシリーズ通算62話制作してきましたが、『終物語』放送に際して、改めて、新番組の第1話として観ていただき、楽しんでもらえるものを目指しています。1話を1時間スペシャルとして放送するのもそうした意図を反映した形ですね。
岩上
元々は1話30分の構成でシナリオ制作が進んでいたのですが、『終物語』第1話「おうぎフォーミュラ」は、明確な謎が提示され、その解決を描く推理劇的なストーリーです。だからこそ、解決まで視聴者の方を1週間お待たせするのではなく、一気に観ていただく形を採りました。『化物語』を15話で構成すると決まった際もそうでしたが、あくまで作品準拠、どうすれば作品を一番良い形で視聴者の皆さんに届けられるかを考えた上でのアイデアだと思っています。

第1話の見所を伺わせて下さい。

新房
<物語>シリーズにしては珍しく、メインキャラだけではなく、沢山のクラスメイトが登場して喋り議論する、いわば学級裁判の様なストーリーなのですが、これまでのアニメ化ではメインキャラ以外は登場させない方法を採ってきました。 その上で、新キャラクターの老倉育(おいくらそだち)以外のクラスメイトは全員映さないという判断をしたのですが、推理劇として最後まで誰が犯人かわからない様に、お話として魅力的に見せていかないといけません。そうした映像化の難易度が高い内容に、スタッフがどう挑んだのかを是非観ていただきたいですね。

新キャラクター 老倉育(CV:井上麻里奈)

先ほどのお話の中に出てきた老倉育に関して、キャラクターとしての魅力、どの様に描いていきたいかを伺わせて下さい。

新房
新キャラクターではありますが、これまで<物語>シリーズに登場した全員に負けない魅力を持っていると感じていて、思い入れを持って描いています。彼女の生い立ち的な部分が自分に刺さったと感じているのですが、メインヒロインになってもおかしくない存在感がありますね。その魅力を声の部分で表現出来るのは、自分の中では小説を読んでいる時から井上麻里奈さんのイメージがあり、<物語>シリーズのキャストはほぼオーディションで決めていますが、今回は井上さんを指名させていただきました。

アフレコで井上さんの芝居を聞かれていかがでしたか?

新房
イメージ通りとても良かったです。冷たさもありながら、内面の激情的な部分も上手く出してもらい、決して大人になりきっていない必死さも芝居に込められています。 今回の井上さん含め、<物語>シリーズのキャスティングは、お陰様で全体的に非常に良い感じです。西尾さんの小説は言葉に非常に力があるので、声が付き音で聞く事で、キャラクターの魅力を更に感じる事が出来る、いわばキャストがキャラクターを更に昇華させている感じがありますね。 第1話「おうぎフォーミュラ」のタイトルにもある忍野扇の声を演じていただいている水橋かおりさんも、本当にしっくりきています。あの、どこかつかみどころがないけれど、気付くと中心にきている感じは本当に良いですね。『終物語』は、1話以降の「そだちリドル」「そだちロスト」でも、老倉育も忍野扇も非常に出番が多いので、是非期待して下さい。
岩上
新房さんが仰った映像面やキャスト面の魅力の一端は、今日公開したPV第1弾で感じていただけると思いますので、是非ご覧いただければ嬉しいです。

『終物語』構成に関して

タイトルのお話が出ましたが、『終物語』は、上・中・下巻と大変長いストーリーですが、アニメとしてはどの様に構成されるのでしょうか?

岩上
上・中・下巻、全てアニメ化します。ただ、10月からの放送では、まずは1クール(全12話)で、上巻(「おうぎフォーミュラ」「そだちリドル」「そだちロスト」)と、中巻(「しのぶメイル」)をTVアニメ化します。下巻(「まよいヘル」「ひたぎランデブー」「おうぎダーク」)も既にシナリオ制作は終了しているのですが、内容的に、阿良々木暦の高校生活、彼の青春の終わりを描いたストーリーなので、皆さんへの届け方をもう少し練らせていただき、作品にとって一番良い選択をする時間をもう少しだけいただければと思っています。

暦ということでいえば、小説のファイナルシーズンには『暦物語』もあります。

岩上
『暦物語』もアニメ化を企画中です。こちらも原作が他とは違うショートショートという形態ですので、新房さんやシャフトさんと相談しながら発表形態を検討しているところです。まずは10月からのTVシリーズ1クールを楽しんでいただき、『終物語』下巻や『暦物語』も期待してお待ちいただければ嬉しいです。

視聴者の方へのメッセージ

では最後に、改めて視聴者の方へ、意気込みやメッセージを頂ければ。

新房
新番組『終物語』として、ここから観ても皆さんに楽しんでいただけるものを制作しています。ただ、今までのアニメの中に、今回の『終物語』への伏線が散りばめられているので、もし余裕があれば、今までのアニメを見返していただき、更に楽しんでもらえたら嬉しいです。
岩上
今までを見返す点に関しては、アニメのパッケージがお手元にあれば勿論是非なのですが、今回、シリーズ全体の時系列表を制作しましたので、『終物語』放送前にこちらもご覧いただければと思っています。
新房
それは良いですね。
岩上
『終物語』は、今までの全ての<物語>が集約していくという意味で特別な作品だと思っています。今まで多くのファンの方が作品を応援してくれて、積み重ねてこられたからこそアニメも『終物語』まで辿り着けました。毎週の放送を、皆さんと一緒に私も楽しみたいと思っています。
新房
積み重ねという意味では、今日同席してくれているアニプレックスの宣伝プロデューサー・高橋祐馬さんの宣伝術も、『終物語』で集大成を期待しています。
高橋
総監督からのプレッシャー……(汗)。頑張ります!

ありがとうございました!

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